「アフターグラデュエーション  -After graduation-」
 
 
登場人物
 
桑田嘉月  クワタ カヅキ:18歳 男性 軟派な性格の高校生。三人の中で一番はっちゃけている
 
高宮明   タカミヤ アキラ:18歳 男性 しっかり者でスポーツ万能。いつも暴走する二人を制止する係
 
槇村ひいな マキムラ ヒイナ:18歳 女性 明るい性格で少しおてんば。嘉月と共に暴走することがしばしば
 
 
 
 
 
 
 
 
*表記方法+配役+台詞数(Lines)*
 
 
嘉月:  L46
 
明:   L39
 
ひいな: L38
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ひいなN:月シリーズ 三月(さんがつ) アフターグラデュエーション
 
 
 
 
 
−卒業式後 三年の教室−
 
 
明:嘉月、こんな所にいたのか。他の奴らと外にいるもんだと思ってたから散々探したぞ
 
 
嘉月:もう皆との別れのあいさつに疲れちまったからな。明ももういいのか?
 
 
明:あぁ、済ましてきたよ。それじゃ「あそこ」に行くか
 
 
嘉月:あいよ。・・・そうだ、ひいなより先に行って脅かしてやろっと
 
 
明:あ、槇村ならもう先に・・・って、もう行っちまったよ
 
 
 
 
 
−屋上前の扉−
 
 
嘉月M:けっけっけ、あいつのことだから脅かされた時に「くやしいぃぃ!」って悶える姿が目に浮かぶ――― ガチャ
 
 
ひいな:(嘉月の目に浮かぶあたりで)わっ!!!!
 
 
嘉月:(すかさず)うぉぁっ!!??
 
 
ひいな:やったー!びっくりドッキリ大成功ー!!
 
 
嘉月:くやしいぃぃ!!
 
 
ひいな:へっへーん、いつものお返しだよ!はぁーすっきりしたー
 
 
嘉月:最後にしてやられるとは・・・
 
 
明:槇村、どうだった?
 
 
ひいな:大成功だよ、ブイ!
 
 
嘉月:明テメェ知ってたのかよ!?
 
 
明:先に下で会ってたからな。それに言おうとする前に勝手に走ってったのはお前だろ・・・
 
 
嘉月:そーですね、俺が悪かったよーだ
 
 
ひいな:ふふっ。・・・なんか私たちが出会った時のこと、思い出すね
 
 
嘉月:えーと、確か俺は授業サボろうとして屋上に行って―――
 
 
ひいな:私は休み時間に屋上で空に見とれて授業のこと忘れちゃってて―――
 
 
明:それで俺が先生から探すように言われて屋上に行ったら二人がいて
 
 
ひいな:それからだよね、私たちが話すようになったのは
 
 
嘉月:それまでは「ただのクラスメートの内の二人」だったからな
 
 
明:この三人でつるむようになるのも、そんなに時間は掛からなかったな
 
 
嘉月:偶然俺たちの波長が合ったんだろ
 
 
ひいな:なんか嘉月が波長とか訳分かんないこと言ってる
 
 
嘉月:うるせーなぁ
 
 
ひいな:でも大体何かするにもこの三人だったよね
 
 
明:そのせいで槇村が他の女子から反発食らってたよな
 
 
ひいな:うっ・・・、そ、それはもう解決したからいいのよ!
 
 
嘉月:(女子の声で)槇村さんっていつも桑田君と高宮君と一緒にいるよね?もしかして二人と付き合って・・・ぐあっ!!
 
 
ひいな:それ以上言うと骨折るわよ?
 
 
嘉月:ハイ、スミマセンデシタ・・・
 
 
明:まぁ俺らも俺らで色々言われたよな
 
 
嘉月:あー、「おい、お前らどっちか槇村と付き合ってんのか?もしかして二人で・・・ぐおっ!!
 
 
明:それ以上言うな
 
 
ひいな:二人で?どういうこと?
 
 
明:気にするな
 
 
嘉月:でも楽しかった分、先公にも結構怒鳴られたよな
 
 
ひいな:いや怒られてたのほとんど嘉月だけだったし
 
 
明:お前は程度を知らんからな
 
 
嘉月:なんで最後の日まで弄られなきゃいけねぇんだよぉ
 
 
明:宿命だな
 
 
嘉月:なんだよそれ
 
 
ひいな:プッ
 
 
嘉月:おい何笑ってんだよ
 
 
ひいな:だって弄られ続ける宿命って・・・くくっ
 
 
嘉月:なりたくてなったんじゃねぇよ
 
 
ひいな:くくっ・・・。はぁ、ホントに最後か・・・
 
 
明:別にもう一生会えない訳じゃないだろ?
 
 
ひいな:・・・でも離れ離れになるじゃない。明は都会に、嘉月は地方に、・・・私はこの街に
 
 
嘉月:今は電話だってメールだって出来んだから問題ないだろ?
 
 
ひいな:問題大アリだよ・・・、会えなくなるのは嫌だよ・・・
 
 
嘉月:今更子供みたいなこと言うなよ。進路決める時に三人で決めただろ
 
 
明:・・・三人離れることになっても自分の夢を追い続けよう、って
 
 
ひいな:でも・・・そんなこと言ったって・・・寂しいんだもん
 
 
嘉月:何ちょっと泣いてんだよ
 
 
ひいな:(鼻をすすりながら)泣いて・・・ないもん
 
 
嘉月:目から汗か?
 
 
ひいな:・・・そうだもん
 
 
(少し間を空ける)
 
 
明:じゃあ槇村が呼んでくれよ
 
 
ひいな:え?
 
 
明:槇村が寂しく感じた時、会いたいなと思った時に呼んでくれればいいんだよ
 
 
ひいな:明・・・
 
 
嘉月:お、俺だってそう言おうと思ってたけど先に言われちまったな
 
 
明:嘘付け
 
 
嘉月:嘘じゃねーし!それだったら俺は月一でひいなの所に会いに行ってやる
 
 
明:まぁ俺は月二でいけるけどな
 
 
嘉月:何調子こいてんだよ。なら月三だ
 
 
明:お前地方の大学だから遠いだろ。まぁ俺は週一は行けるかな
 
 
嘉月:じゃあ三日に一回だ!
 
 
明:二日に一回!
 
 
嘉月:毎日!!
 
 
ひいな:・・・くすっ
 
 
嘉月:何笑ってんだよ
 
 
ひいな:だって、だって・・・子供みたいなんだもん・・・くくく
 
 
明:まぁ、あれだ。つまり、その・・・
 
 
ひいな:うん?
 
 
明:俺も嘉月も槇村のことが、好きで、心配・・・だってことだよ
 
 
嘉月:ま、そういうことだな
 
 
ひいな:何?それって告白?
 
 
明:なんで泣きやんで食いついてくるんだよ
 
 
嘉月:それに告白って。ねーよ
 
 
ひいな:なんでよっ!?
 
 
明:槇村は妹みたいで心配でほっとけない、みたいなアレだよ
 
 
ひいな:なによそれー・・・しかもなんで姉じゃないのよー
 
 
嘉月:会えなくなるだけで泣くような姉貴はいらねーよ
 
 
ひいな:ふーんだ
 
 
(間を空ける)
 
 
嘉月:おっと、そろそろ日が暮れてくんな
 
 
ひいな:昔話、一杯したねー
 
 
明:ほとんど嘉月の失敗談だけどな
 
 
嘉月:失敗談じゃなくて武勇伝だ!
 
 
ひいな:はいはい
 
 
明:それじゃあそろそろ解散するか
 
 
ひいな:あ、・・・私もうちょっとここに残っていいかな?
 
 
明:まだ感傷に浸り足りないのか?
 
 
ひいな:まぁそんな感じかな
 
 
嘉月:フェンスから飛び降りんなよ
 
 
ひいな:そんなことするわけないでしょ
 
 
明:じゃあ先に下で待ってるぞ
 
 
ひいな:うん、ありがと
 
 
 
 
 
嘉月:なぁ、明
 
 
明:うん、どうした?
 
 
嘉月:さっき話してて、ひいなが泣いてた時さ。お前好きって言ったじゃん?
 
 
明:うん
 
 
嘉月:あれってガチだったんだろ
 
 
明:あぁ
 
 
嘉月:いいのか、今から言いに行かなくて
 
 
明:あぁ。さっき言ったので満足した
 
 
嘉月:そしたら俺が言いに行っちゃうぞ
 
 
明:なら応援する
 
 
嘉月:・・・つまんねぇ奴だな
 
 
明:嘉月だって分かってるんだろ?
 
 
嘉月:まぁ、な。・・・お前らとは大学行っても、就職しても、歳とっても、バカやって遊びまくる。そんな悪友だろ
 
 
明:だな
 
 
嘉月:でも
 
 
明:ん?
 
 
嘉月:・・・家に帰ってから後悔しね?
 
 
明:(クスリと笑いながら)・・・するかも
 
 
嘉月:バカだなぁ、お前も
 
 
明:そうだな、お前もな
 
 
(嘉月・明が笑い合う)
 
 
 
 
 
 
 
 
ひいなN:嘉月、明。大好きだよ、ありがとう。・・・二人は私の大事な友達。これからも、ずっと―――
 
 
 
 
 
−Fin−
 
 
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