「カミングオブエイジデイ  -Coming of age day-」
 
 
登場人物
 
葛原睦月   クズハラ ムツキ:二十歳 男性 淡白で保守的な性格。ツッコミ兼ボケ役
 
細川成人   ホソカワ ナリヒト:十九歳 男性 やかましい。ムードメーカー。ボケ役。あだ名はナルもしくはナルト
 
尾花霞    オバナ カスミ:二十歳 女性 姉御肌でしっかりもの。ツッコミ役(主に成人への)
 
萩瀬撫子  ハギセ ナデシコ:二十歳 女性 物静かな性格。傍観者役
 
 
 
 
 
 
 
 
 
*表記方法+配役+台詞数(Lines)*
 
 
睦月: L72
成人: L45
霞:  L40
撫子: L53
 
 
 
 
 
 
 
 
 
※この台本では未成年が飲酒する場面がございますが、未成年の飲酒を勧めているわけではありませんのでご了承ください。あくまでもこれはフィクションであり、実際は二十歳未満の飲酒は法律で禁止されています
 
 
 
 
 
 
 
 
睦月N:月シリーズ 一月 カミングオブエイジデイ
 
 
 
 
 
成人:あー、やっとかったるい成人式が終わったなぁ
 
 
睦月:かったるいって、お前終始寝てただろ
 
 
霞:ホントよ、ずっと葛原の肩に頭乗せながらグースカピースカ
 
 
成人:アレは俺の話を聞くスタイルなんだよ
 
 
霞:最低のスタイルね……
 
 
撫子:でも、そう言う霞も寝てたけどね
 
 
霞:あ、あれはただちょっとウトウトしただけよっ
 
 
成人:寝たんだったら俺と変わんねぇよー
 
 
霞:アンタが言うな
 
 
撫子:それでこの後はどうするの?小学校のクラスの皆と飲みに行く?
 
 
成人:んー、あいつらといると疲れるから行きたくねぇな、俺は
 
 
霞:まぁ私らはアンタがいると疲れるんだけどね
 
 
成人:なにおー
 
 
霞:なによー
 
 
睦月:はいはい、口喧嘩はそれくらいにしとけ。それでどうするんだ、行くのか?
 
 
成人:いや、行かねぇ。俺はこの四人で飲めたらいいや
 
 
霞:あ、なんかその言い方ムカつく
 
 
成人:なんにでも突っかかってくるのな、お前
 
 
霞:お前じゃなくて霞ですー!
 
 
成人:お前だってさっき俺のことアンタって言ってたじゃねーか!
 
 
成人・霞:がるるるる……
 
 
撫子:くすっ。やっぱり二人仲良いね
 
 
睦月:俺にはそうは見えんが
 
 
撫子:睦月君は成人君と同じ考え?
 
 
睦月:ん?あぁ、まぁそうだな。確かにこのメンバーが一番気楽だ
 
 
成人:だろ?それじゃあさっさと行くぞー!
 
 
霞:その前に一旦家に帰るわよ
 
 
成人:俺は別にスーツのままでも構わねーけど
 
 
霞:私と撫子が構うのよ
 
 
撫子:流石に振袖のままじゃ、ね
 
 
成人:萩瀬はともかく尾花も……?
 
 
霞:殴るわよ
 
 
成人:ゴメンナサイ
 
 
睦月N:俺たち四人は小学校の時からの幼馴染で、中学・高校と全く同じ場所で同じ時間を過ごしていた。
          大学になると流石に皆バラバラの所に行ったのだが、それでも連休などになると四人集まってバカをやっていた
 
 
 
 
 
成人:あー、遅えなぁ二人とも
 
 
睦月:そりゃ着替えに手間取るだろ。皺付けないようにしないといけないし
 
 
成人:めんどくさいなー、女って
 
 
霞:誰がめんどくさい女だってー?
 
 
成人:え!?いやっ、違っ!お前のことじゃなくて女性全般のことを言っただけで―――
 
 
霞:ちょっとこっちこようかーなりひとくん
 
 
成人:いやあぁぁ、誤解だあぁぁ!!
 
 
睦月:ふぅ……あ、萩瀬
 
 
撫子:待たせてゴメンね?
 
 
睦月:いや、そんなに時間経ってないから気にするな
 
 
撫子:……そういえば皆で遊びに行くことは沢山あったけど、お酒を飲みに行くことは無かったよね
 
 
睦月:まぁ未成年だったしな。萩瀬は酒飲めるのか?
 
 
撫子:人並み、かな
 
 
霞:よし、粛清終了♪
 
 
成人:ぁぁ……
 
 
睦月:おい、ナル。大丈夫か
 
 
成人:ぅぅ……
 
 
睦月:大丈夫だな
 
 
成人:これのどこを見て大丈夫なんだよっ!
 
 
睦月:それだけ元気にツッコミが出来たら問題ないだろ。そんじゃ行くぞ
 
 
成人:うぅ……
 
 
霞:早く来なさいよね
 
 
成人:不憫だ……
 
 
 
 

−居酒屋にて−
 
 
成人:とりあえず皆、生でおっけー?
 
 
睦月:あぁ
 
 
撫子:私もいいよ
 
 
霞:あー、私はビールはちょっとダメかな。……カシオレで
 
 
成人:あいよー。すみませーん、生三つとカシオレ一つで。あと枝豆とサーモンのカルパッチョと……揚げ出し豆腐お願いしますー
 
 
霞:でもアレだよね、この中でまだ二十歳になってないのって―――
 
 
成人:それを言うなって。バレたら面倒くさいだろ
 
 
霞:面倒なのはアンタだけだから、バレたら他人のフリするわよ
 
 
撫子:そうだね
 
 
成人:ちょっと、萩瀬まで……
 
 
霞:それにしても名前が成人なのにまだ成人じゃないって……ぷぷ
 
 
成人:……今お前は俺の触れてはいけない所に触れたな!
 
 
霞:何よ、やるって言うの?
 
 
睦月:なんでまだ酒飲んでないのにこんなにテンション高いんだよ……
 
 
撫子:きっと久しぶりに会えて機嫌がいいんだよ
 
 
睦月:喧嘩するほどなんとやらってやつか?
 
 
成人・霞:違うっ!
 
 
成人:おい、俺の言葉パクんなよ!    ※パクる=まねをする、盗む
 
 
霞:アンタがまねしたんでしょー!
 
 
睦月:おい、酒と料理来たから食うぞー
 
 
 
 
 
成人:なぁ、霞ー
 
 
霞:なぁに、ナルー?
 
 
成人:さっきまでああやってケンカしてたけど、実は霞に会えて嬉しかったんだぜ?
 
 
霞:ホントにー?まー、実はわたしもそうなんだけどねー
 
 
成人:マジかよー!すんげぇテンションあがるわー
 
 
睦月:二人ってこんなに酒弱かったのか……
 
 
撫子:しかもすっごくラブラブだね……
 
 
成人:霞ー♪
 
 
霞:ナールー♪
 
 
睦月:見てるのが逆につらいな
 
 
撫子:そうだね……
 
 
睦月:……もう二人とも気にしてないみたいだな
 
 
撫子:何のこと?
 
 
睦月:いや、高校のときナルがノリで尾花に告ったけど、それにキレて一時期気まずくなっただろ
 
 
撫子:あー、そういえばそんなことあったね。あの時霞泣いてたんだよね
 
 
睦月:そうだったんだ
 
 
撫子:うん。ノリとか勢いとかじゃなくって、成人君には真面目に言って欲しかったって
 
 
睦月:アイツはそんな雰囲気嫌いだからな、それで誤魔化すためにそんな風に言ったんだろ。でもあんなに怒られると思わなかったってしばらくヘコんでたな
 
 
撫子:そのあと睦月君が二人をフォローしたからこうやって仲良くなってるんだよ?
 
 
睦月:俺は何もやってない、勝手に仲直りしたんだよ
 
 
撫子:そんなことないよ、私は知ってるもん
 
 
睦月:……ふぅ、こうなったときの頑固な萩瀬には負けるな
 
 
撫子:なによそれー
 
 
成人:お二人さん、何イチャイチャしてんだよー
 
 
霞:してんだよー
 
 
睦月:お前らに言われたくない
 
 
撫子:イチャイチャ……してた、かな?
 
 
成人:それはもうカップルかって位に、なー?
 
 
霞:ねー?
 
 
睦月:はぁ……
 
 
撫子:(呟くように)カップル……
 
 
睦月:どうした?
 
 
撫子:っ!?ううん!なんでもないよっ!
 
 
睦月:そうか?
 
 
成人:そういやこの後カラオケ行くぞって話してるけど、もちろん行くよな?
 
 
睦月:んー、俺はいいかな
 
 
霞:えー、行こうよ行こうよー。四人で行かなきゃ意味ないでしょ、ねぇ撫子?
 
 
撫子:うん、私は一緒に行きたいな
 
 
睦月:……俺はほとんど歌わないからな
 
 
成人:けってーい!それじゃあ会計してさっさと行くぞー!
 
 
睦月:行くまでの道に公園あったよな?そこでちょっと休憩してから行くわ。少し飲みすぎたみたいだ
 
 
撫子:私、付いて行くよ?
 
 
霞:一人じゃアレだしお願いするわ
 
 
睦月:いや、一人で大丈夫だ……おっと
 
 
霞:介抱してもらいなさい
 
 
 
 
 
睦月:……ふぅ。……萩瀬、すまんな
 
 
撫子:よっこいしょっと……睦月君、大丈夫?
 
 
睦月:うん……ちょっと疲れてるだけだ
 
 
撫子:なんだかんだで一番飲んでたの睦月君だったもんね
 
 
睦月:飲んでる間ずっと傍観してたけど、俺が一番楽しんでたのかもしれないな、はは
 
 
撫子:……
 
 
睦月:……ん、どうした?
 
 
撫子:……睦月君は、成人君と霞の二人見て何か思った?
 
 
睦月:あの二人か?んー、高校の時よりも仲が良くなったなって感じかな。やっぱり会えて嬉しかったんだろうな
 
 
撫子:……私は、二人見ててすごい羨ましかったな
 
 
睦月:?
 
 
撫子:男の子とあれだけ仲がいいから……
 
 
睦月:それって俺と萩瀬の関係と違うのか?
 
 
撫子:うん……なんて言ったらいいのか上手く表現できないんだけど、それよりももっと繋がりが深い関係というか……例えば、恋人……とか
 
 
睦月:でもあいつらは付き合ってるわけじゃないだろ?
 
 
撫子:でも、お互い好き同士だから……付き合うよ、絶対
 
 
睦月:そうかもな
 
 
撫子:霞はずっと好きだったって言ってた。けど長い間一緒にいてるからどう伝えたらいいのかわかんないって。
        だから今日、酔ってだけどお互いの気持ちを伝えてるの見ておめでとうって思ったけど、
        それと一緒に羨ましいって思っちゃった
 
 
睦月:どうして……?
 
 
撫子:……私も同じように悩んでるから。でも、その人に全く近づいてる気がしないから
 
 
睦月:え……?
 
 
撫子:いつもこうやって近くにいるのに、気持ちを伝える勇気がなかったから。だから、今日は言うって決めたの
 
 
睦月:……
 
 
撫子:睦月君。私は睦月君のことが好き
 
 
睦月:それは酔った勢いでただなんとなく、とかじゃないよな
 
 
撫子:違うよ。小学校の頃一人ぼっちだった私に話しかけてくれたあの時から、この気持ちは変わってないよ
 
 
睦月:……
 
 
撫子:睦月君、返事を聞かせて
 
 
睦月:……このままの関係じゃダメなのか?
 
 
撫子:それは、無理ってこと……?
 
 
睦月:……正直怖いんだ、今までの関係が変わってしまうんじゃないかって
 
 
撫子:付き合ってもそれは何も変わらないよ
 
 
睦月:でも。それだったら今までの幼馴染の関係でいいんじゃないのか?
 
 
撫子:そういう意味じゃなくて……
 
 
睦月:俺は、幼馴染の関係を壊したくない
 
 
(間を空ける)
 
 
撫子:(鼻をすする)ぐすっ……
 
 
霞:こら!葛原!!なに撫子泣かせてるのよっ!!
 
 
睦月:尾花!?それにナルまで……
 
 
成人:来るまで待とうって言ってたけど、中々来ないから心配してきたんだよ
 
 
霞:それで、なんで断るのよ?
 
 
睦月:聞いてたなら分かってるだろ。今までの関係が変わってしまうのが怖いって
 
 
霞:あのねー、撫子が言ってた変わらないってのはそういう意味じゃないわよ。付き合っても私たちの関係がギクシャクするわけないじゃない
 
 
睦月:もし別れたりしたら四人とも気まずくなるだろ
 
 
霞:……葛原がこんなに馬鹿だとは思わなかったわ
 
 
成人:同感だな
 
 
睦月:何がだよ
 
 
霞:付き合うかどうかって時に別れる時の想定なんてすんじゃないわよ。
     撫子に好きって言われたんでしょ、だったらその時思ったことをそのまま言えばいいのよ
 
 
成人:睦月は萩瀬のこと嫌いか?
 
 
睦月:そんなわけないだろ
 
 
成人:じゃあ好きって言われてどう思った?
 
 
睦月:……
 
 
霞:男だったらハッキリ言いなさいよ
 
 
睦月:……すごく嬉しかったよ
 
 
霞:なら答えはもう出てるじゃない
 
 
睦月:……分かった、二人だけにしてくれるか?
 
 
成人:あいよ
 
 
 
 
 
撫子:(鼻をすする)
 
 
睦月:萩瀬、さっきはすまんかった
 
 
撫子:……
 
 
睦月:多分ずっと一緒にいたから知ってると思うけど、俺今まで付き合ったことが無かったんだ。
        だから正直付き合った後何をしてやれるかとかどう接していけばいいんだとか、全く分からないんだ
 
 
撫子:……うん
 
 
睦月:それで、萩瀬と付き合ったとしても恋人らしいこと出来なくて幻滅させてしまうかもしれないから・・・さっきはああ言った
 
 
撫子:……うん
 
 
睦月:けどそれは単に受け入れる勇気が無かっただけだったって、尾花に教えてもらった。……だから今度はホントの気持ちを言う
 
 
撫子:……うん
 
 
睦月:……あー、確かに気持ち口に出すって勇気がいるんだな。顔が熱いなってのがよく分かる
 
 
撫子:・・・そうだね
 
 
睦月:えー、んんっ(声を整える。そして段々声を小さくして)俺も、萩瀬のことが……好きだ
 
 
撫子:聞こえなかったからもう一回言って欲しいな
 
 
睦月:俺は、萩瀬撫子のことが、好きだ!
 
 
撫子:(鼻をすする)……ありがと
 
 
霞:ヒューヒュー、こっちまで聞こえちゃったよー
 
 
睦月:うぅ……
 
 
成人:いつもといじられる立場が逆になっちまったなー
 
 
睦月:お前は、後で、殴る
 
 
成人:なんでだよ!?俺まだ何も茶化してねーじゃねぇか!
 
 
撫子:ふふっ
 
 
霞:それじゃあ気を取り直してカラオケに行くわよー
 
 
成人:今日はオールで歌うぞー!
 
 
(少し間を空ける)
 
 
睦月:ふぅ
 
 
撫子:睦月君
 
 
睦月:ん?どうした
 
 
撫子:何があっても私たちは変わらないから
 
 
睦月:……そうだな
 
 
撫子:それじゃ、二人の所に行こっか
 
 
睦月:あぁ
 
 
−fin−
 
 
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