「フォールアウト」

登場人物

秋田 和彦  アキタ カズヒコ:17歳 男性 
元気でバカでクラスのムードメーカー的存在な少年。しかし、今までに彼女が出来たことがなく、
高校生活の間に何とか彼女を作ろうと尽力する。普段はおふざけだが、やるときゃやる男


久米田 蓮   クメダ レン:17歳 男性 
暴走する和彦をコントロールする、和彦の相棒的存在。
和彦同様今まで彼女はいないが、特に彼女は欲しくないためだと言い張っている


柏原 花梨   カシハラ カリン:17歳 女性 
芸能人のようなきれいな顔立ちであるが、本人は内気であり、自分は人気者には絶対なれない
タイプだと思っている。学校では眼鏡をかけ髪を縛り、地味な格好でいる。蓮とは小学校からの知り合い

男生徒            :16〜17歳 男性 セリフが4つなので和彦とのかぶり推奨

女生徒            :16〜17歳 女性 セリフが3つなので花梨とのかぶり推奨




*表記方法+配役+台詞数(Lines)*

和彦: L56
蓮:  L63
花梨: L52
男生徒: L4
女生徒: L3


※この劇をしていただくのであれば、先に台本を流し読みして内容を確認し、最後のお願いを読んで頂けるとありがたいです













−休日 和彦と蓮の二人は街へ遊びに出ていた−



和彦:おい、蓮。秋といったら何だと思う?


蓮:なんだよ藪から棒に。食欲の秋か?


和彦:ちっちっ、違うね


蓮:じゃあ、スポーツの秋


和彦:それも違うな


蓮:あと読書の秋しかないぞ


和彦:残念、全部ハズレだ


蓮:じゃあ一体なんだよ?


和彦:答えは……恋愛の秋だ!!


蓮:……は?


和彦:という訳だ、蓮君!二人でナンパしに行こうではないか!!


蓮:まずお前の思考回路がどうなってるのか知りたい。後俺は行かん


和彦:なんでだよー


蓮:別に俺は相方なんていらない


和彦:そんなこと言ってるけど本音はどうなのかなー…とか言ってるそばから、
        前からスンゲー美少女がこっち来てるじゃねぇか!?おい、蓮!行くぞ!!


蓮:おい、待てって!!……って、あいつは


和彦:(少しキザったく)そこの可愛くて綺麗なお嬢さん、僕と一緒にこれからどこかへ遊びに行きませんか?


花梨:……はぁ


蓮:おい、和彦


和彦:あ?なんだよ蓮


花梨:あ、蓮君


和彦:(段々声が小さく)俺は今からこの子と一緒に遊びに行くんだよ……
       (声の大きさを元に戻す)って!この子と知り合いなの!?


蓮:だから待てって言ったろ…


和彦:(小声で)おい、蓮。俺にこの子を紹介しろよ。ったく、なんでこんなに可愛い子が
       近くにいるのに彼女が欲しくないなんて言うんだ。全く意味がわかんねぇよ


蓮:いや、お前知ってるだろ。同じクラスの柏原だ


和彦:へ?柏原って…あまり目立たない格好の…あの柏原か?だって眼鏡かけてないじゃん


蓮:本人の前でよくそんな目立たないとか言えるな。そうだよ、その柏原だよ。普段は眼鏡は掛けて無いんだよ


花梨:別に良いよ、ホントのことだし……


和彦:っえええ!!??





蓮N:四季シリーズ 秋 フォールアウト





−翌日、学校にて−



和彦:ったく、昨日は散々な目に遭ったぜ


蓮:お前が勝手にはしゃいで勝手に自滅しただけだろ。……お、柏原。おはよ


花梨:あ、蓮君おはよ…。秋田君もおはよ


和彦:おっはよー!!


花梨:…… ポカーン


和彦M:あれ、外しちゃった感じ……?


蓮:なんか喋れよお前ら。お見合いじゃないんだから


和彦:あ、あぁ……えーと、今日はいい天気だな


花梨:え?うん、そうだね…


和彦M:あれ?反応が薄い……


花梨M:えっと、何を話したら良いんだろ……


蓮:だめだこりゃ



−1限目HRにて−



蓮:えー、早速だけどそろそろ学祭でやる劇について決めたいと思う。なんかいい案はないか?


男生徒1:無難にシンデレラがいいでーす


女生徒1:私ハムレットがいいなぁ


男生徒2:やっぱり日本人だったら桃太郎だろJK


蓮:あー、なんか一杯案があるが……他に何かあるか?


和彦:……ロミジュリ


蓮:ん?どうした和彦。なんかあるのか?


和彦:ロミオとジュリエットがやりてぇ!


蓮:お、おぉ。すごいやる気だな。他に何もないかー?(少し間をおいて)他に何もないみたいだしこれで決をとるぞー





――――――――――――

――――――

―――




蓮:過半数超えたんで、このクラスの劇はロミオとジュリエットで決定だな


和彦:いやっほーぅ!


蓮:一名変なテンションの奴がいるが、早く決まったのはいいことだ。それじゃあ次は配役を決めるがまずは主役の―――


和彦:(配役を〜から割り込むように)はいはい!俺が主役をやりてぇ!!


蓮:……だそうだ。皆、異論がある奴は言ってくれ


男生徒3:別にありませーん


女生徒2:私もー。秋田君だったらおもしろいロミジュリが見れそうだしー


蓮:んじゃ、ロミオ役は和彦で決定だ。次は順当に行けばジュリエットの役だな。…誰かやりたい奴はいるかー?

 

和彦:しつもーん。これって推薦はあんのか?


蓮:んー、まぁ立候補する奴が居なきゃそういうことになるな。…聞くって事はヒロインをやって欲しい奴がいるのか?


和彦:俺は柏原にやってほしいでーす


花梨:(少し間をおいて)え!?


男生徒4:(小声で)なんで柏原さん……?


女生徒3:(小声で)もっと適任な子がいるのにぃ


花梨:……


蓮:あー、和彦は柏原にやって欲しいと言ってるが…どうする?


花梨:……立候補の人はいないんですか?


蓮:立候補したい奴はいないかー?


(少し間を空ける)


蓮:これが答えみたいだな。一応拒否はできるんだから嫌なら別に言ってもいいんだぞ


花梨:断る理由は無い…です…


蓮:ん、そうか……。これでヒロインは柏原で決定だ。そんじゃあ次はロミオの父親を決めるぞ




――――――――――――

――――――

―――




−HR後の休み時間−


蓮:本当に良いのか?今ならまだ決め直せるぞ


花梨:別に大丈夫だよ、私は


蓮:まさか和彦がこんなことを考えるなんて思いもしなかったからな……スマン


花梨:謝らなくてもいいって。嫌ならちゃんと嫌って言うから


蓮:……もしかして和彦のことが好きだから了解したとか、じゃないよな?


花梨:そういう理由じゃないよー。……ただ自分がヒロインになるなんて、こんな機会がなかったら絶対に出来なかったから


蓮:ホントか?


花梨:なんかいつもより食いついてくるんだね


蓮:あぁ、悪い悪い。まぁ柏原がそこまで言うんだったら問題ないだろ。ヒロイン、がんばれよ


花梨:うん、ありがとう




――――――――――――

――――――

―――




−放課後、教室で練習中の二人−


花梨(ジュリエット):どうやってこの場所に入ってきたのですか。どなたの案内で来たのでしょうか


和彦(ロミオ):(棒読みでぎこちなく)愛に導かれて、やってきました。案内人、など、いません。
                  しかし、あなたがどれほど・・・離れていようと、そこがはるかな海に、洗われている大きな、
                  き、岸辺だとしても、私はあなたのような、宝を求めて、たっ、旅に出ましょう


花梨:少し噛みすぎですね。あと感情が全くこもってないです


和彦:うっ、柏原さんてこういう時はハキハキするタイプなのね……


花梨:私たちがこのクラスの評判を左右するんですからねっ


和彦:わ、わかってるって


花梨:本当ですか?……それじゃあ少し休憩しましょうか


和彦:そういや言いそびれてたけど、…勝手にヒロインに決めちゃってごめんね


花梨:別に気にしてないですから。確かに最初は少し嫌でしたけど


和彦:……ごめんなさい


花梨:あ!別にそういう意味じゃなくて!……今までの私じゃこんな役には
        絶対なれなかったので、今は逆に感謝してるくらいです


和彦:そ、そうか?……あとさ、なんで学校では眼鏡かけてんの?髪型も昨日のほうが可愛くて似合ってたのに


花梨:えーっと、それは……


和彦:あ、なんか聞いちゃいけなかった感じ?


花梨:いえ!そんなことはないんですけど…。中学校の時にガラの悪い人たちに色々からまれたので、
        なるべく地味な格好でいようって思って……自信過剰ですよね


和彦:ふーん。やっぱり美人はそれなりに大変なんだな


花梨:べ、別に美人なんかじゃ、ないですよ……


和彦:ま、今そんな奴がいたら俺がぶん殴ってやるけどな……って、それじゃあ俺もガラの悪い奴らと一緒だな


花梨:ふふっ、やっぱり面白い人ですね。…それと、髪型を褒めてくれてありがとうございます


和彦:そんな礼を言われるようなことじゃないと思うんだけどな


花梨:女の子は髪型とか身だしなみとか、褒めてくれると嬉しいものなんですよ?


和彦:へぇ、そんなもんなんだ。今度蓮にも教えてやろっと


花梨:…二人って仲いいですよね。いつも一緒にいますし


和彦:んー、性格は正反対だけどなんでかウマが合うんだよな


花梨:あれですね、きっと運命の人……


和彦:ちげーよ


花梨:くすくす。……それじゃあそろそろ休憩終わりましょうか?


和彦:えー、もうちょっと……


花梨:(満面の笑みで)さっさとやりますよ


和彦:は、はいぃ!




――――――――――――

――――――

―――






−学園祭前日の放課後−



花梨M:あーぁ、とうとう明日が本番かぁ。今から緊張しちゃうな…って、あれ?

 
花梨:蓮君、どうしたの?校門の前で
 
 
蓮:ん、あぁ。お前を待ってたんだよ
 
 
花梨:え?私待っといてって言ってたっけ…?
 
 
蓮:いや、俺が勝手に待ってただけだから気にしないでくれ
 
 
花梨:それで…何か用があったの?
 
 
蓮:学祭前に少し話がしたくてな。……劇の練習をする前と比べて随分明るくなったな
 
 
花梨:そ、そうかな
 
 
蓮:あぁ。それに柏原の周りに人が集まるようになった。クラスの奴らはお前をすごいって認めてくれたんだと思う
 
 
花梨:えへへ……。これも全部、秋田君のおかげかな
 
 
蓮:(少し間を開ける)あのさ、お前に言いたいことがあって―――
 
 
花梨:(お前に〜から被るように)前にね、蓮君言ったこと…覚えてる?
 
 
蓮:え?
 
 
花梨:秋田君のことが好きなんじゃないのか?って
 
 
蓮:あ、あぁ。覚えてる
 
 
花梨:確かにあの時はそうだったかもしれないけど、今は……少し違うの
 
 
蓮:……
 
 
花梨:一緒にいてて本当に心から楽しく思えて、それに前の、殻に閉じこもってた私に
        勇気をくれた。もし今、同じ質問をされたら……好きって答えるかもしれない
 
 
蓮:そうか…、そうだな
 
 
花梨:あ、ごめんね!いきなりそんなこと言われても困るよね!?
 
 
蓮:いや、そんなことはない。柏原もちゃんと女の子してて逆に安心した
 
 
花梨:なにそれぇ……なんか急に恥ずかしくなってきちゃった……。あ、そういえば蓮君も何か言おうとしてたよね。なんだったの?
 
 
蓮:いや、なんでもないさ。ただ明日の劇がんばれよ、って言いたかっただけだ
 
 
花梨:本当に?
 
 
蓮:嘘言ってどうするんだよ?
 
 
花梨:じゃあそういうことにしといてあげる
 
 
蓮:なんだよそれ
 
 
花梨:ふふ。……それじゃあまた明日ね
 
 
蓮:あぁ、また明日な
 
 
蓮M:……本当の事を言わなかった奴の結果がこれか
 
 
 
 

−学園祭当日−


和彦:あー、直前になってなんかブルってきた


蓮:おい、なに主役がそんなこと言ってんだよ


和彦:しゃーねーだろ、俺だって人なんだよ


蓮:……話変わるけど、なんでヒロインに柏原を推薦したんだ


和彦:今更だな…。んー、最初はこういう恋愛ものの劇をやって、あわよくば…みたいな感じに思ってたんだけどよ


蓮:ぶっちゃけたな


和彦:でも1ヶ月一緒に練習してて、下心とかそんなんじゃなくて……本当に柏原に惹かれちまったみたいでさ。
        あと、話をしてて楽しかったんだよ。気を使わずに話せるのって蓮以外じゃ初めてだったしな…


蓮:くくっ、お前からそんなセリフが聞けるとは思わなかったよ


和彦:うっせ。ったく、なんで本番前にこんな恥ずかしいこと言わせんだよ……


蓮:はは。……そんじゃ、頑張れよ


和彦:あぁ




−そして劇が始まりいよいよクライマックス−




蓮(ナレ):ロミオの元にジュリエットが死んだという話が入りこんできた。ロミオは夜、
            墓にいる彼女を一目見ようと決心する。しかし、それと同時にロミオはある貧しい薬屋のことを思いだした


和彦(ロミオ):墓の中にいる愛しいジュリエットを一目見て、死を納得した上で毒薬を飲み、彼女のそばに埋葬されよう


蓮(ナレ):そう考えたロミオは急いで薬屋から毒薬を買って馬に乗り、ジュリエットの墓の前に
             たどり着いた。そこには麻酔薬で眠りに落ちているジュリエットの姿があった。
             しかし死んだものと思いこんでいるロミオは彼女の手をとり呟いた


和彦(ロミオ):ああ、美しいジュリエット!なぜこんな姿に。君を、君を……


(間を開けて)


和彦M:やばい、セリフがふっ飛んだ……!


蓮M:おい、その間はまさかセリフ覚えてないとかじゃないだろうな…!


花梨M:もしかして…秋田君、セリフ忘れちゃった……!?


和彦M:落ち着くんだ俺、別に台本通りにやる必要はないんだ。……自分の、自分の気持ちを声に出せばいいんだ


蓮M:早くしないと客がざわつく。和彦、なんとかするんだ


和彦(ロミオ):君を……心から愛している。君が死んだ今もそれは変わらない


蓮M:台本にそんなセリフは無かった……あいつ、アドリブでいくつもりか!?


和彦(ロミオ):君にはもう届かないが、…私は最初君を見た時、外見の美しさに魅了され、浮ついた気持ちで
                  近づいて行った。君もそれには気づいていたはずなのにそれでも私を受け入れてくれた


蓮M:和彦……


和彦(ロミオ):しかし何度も話を重ねている内に、見た目ではなく君の本質である
                  中身に惹かれていた。一生そばで寄り添っていて欲しい、そう思った


和彦:だから、今だからこそ言うよ。君が……好きだ


花梨M:秋田君……


和彦(ロミオ):…もう私はこの世に未練など無い。君のそばにいくよ、ジュリエット

 

蓮(ナレ):・・・そう言ってロミオは毒薬を口に含み、自ら命を絶った。そして昏睡状態から覚めた
             ジュリエットはロミオが傍らで息絶えている姿を見た。その表情は決して言葉では
             表せないほどの悲しい顔をしていた


花梨(ジュリエット):ああ、ロミオ……私はこの眠りから覚める直前、あなたの強く、優しい声を聞きました


蓮M:これも台本に無い。まさか柏原まで……


花梨(ジュリエット):私もあなたに会えて嬉しかった。…もしあなたに会わなければ今もずっと一人で閉じこもっていたに違いありません。
                         あなたのその一言一言に勇気づけられ、私もまた惹かれてゆきました


花梨:だから、私も今言います。あなたが……好きです


和彦M:柏原さん……


花梨(ジュリエット):…そしてこの剣が私をあなたの下へと連れて行ってくれる


蓮(ナレ):……ジュリエットは人の声がこちらに近づいてくるのが聞こえたため、彼女は急いで持っていた短剣のさやを払い、
             自分の身を刺し、誠実なロミオのそばで命を絶った。・・・こうして、残された2人の老公たちは、万事手遅れに
             なってしまったのち、互いに好意を持っているのだということを示し始めたのだ。過去において、両家があまりに
             激しく怒り、憎み合い・・・。あの2人が悲劇の最期をとげなければ、この名家同士の憎悪と嫉妬を取り除くことができなかったのである







−Fin−


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※お願い※本来は墓の元に着いた後、ジュリエットの婚約者であるパリス伯とのやり取りがあるのですが、この劇中では尺と役の関係で省略してあります。ロミオとジュリエットを心から愛している方にはこの改編に関してのご理解をお願いいたします。

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