「フィフスボーイミーツセブンスガール」
 
 
登場人物
 
 
雪待透   ユキマチトオル:男性 15歳(幼少時5歳)
 
倉田神楽  クラタカグラ:女性 17歳(幼少時7歳)
 
 
 
 
 
 
*表記方法+配役+台詞数(Lines)*
 
 
透(幼透):  L57
神楽(幼神): L49
 
 
 
 
 
 
 
 
神楽N:月シリーズ 十一月 フィフスボーイミーツセブンスガール
 
 
 
 
 
幼透:うえぇぇん
 
 
幼神:どーしたの、こんなところで
 
 
幼透:おかーさんとはぐれちゃったぁ
 
 
幼神:ちかくにはいないの?
 
 
幼透:わかんないよう。うえぇぇん
 
 
幼神:そんなことでなかないのっ、オトコノコなんでしょ
 
 
幼透:そんなこと言ったってぇ
 
 
幼神:もぉ、しょうがないわねー。わたしがいっしょにさがしてあげるから
 
 
幼透:ほんとーに?
 
 
幼神:だからもうなかないのっ。わかった?
 
 
幼透:・・・うん
 
 
幼神:わたしのなまえはかぐらっていうの。あなたのなまえは?
 
 
幼透:とおる
 
 
幼神:それじゃあいくわよ、とーる
 
 
幼透:うんっ
 
 
透N:七五三のあの時、初めて彼女に出会った。当時の僕は泣き虫でいじめられっ子で、事ある毎に涙を流していた。そんな僕に話しかけてくれた彼女は当時の僕にとってはすごく嬉しかった
 
 
 
 
 
幼神:それで、どこではぐれたの?
 
 
幼透:んーと、あっち
 
 
幼神:もうそこはさがしたの?
 
 
幼透:うん
 
 
幼神:・・・もうかえったんじゃないの?
 
 
幼透:え、え・・・
 
 
幼神:だってー、ふつうまいごになったところをさがすでしょ
 
 
幼透:(セリフの途中で割り込むように)う、うわあぁぁん!
 
 
幼神:だからなかないのっ
 
 
幼透:だって、だって・・・
 
 
幼神:うそよ、ごめんね
 
 
幼透:ぐすん・・・
 
 
幼神:んーとつぎはこっちいくわよ
 
 
幼透:あ、ちょっとまってよー!
 
 
透N:一方彼女は気が強くて頼りになる女の子。僕はそんな彼女に、幼いながらも一目惚れをしてしまっていた
 
 
 
 
 
幼透:あっ、いた!
 
 
幼神:ほんとうに?
 
 
幼透:うん!かぐらおねーちゃん、ありがとう!
 
 
幼神:よかったわね、みつかって。それじゃあね、とーる
 
 
幼透:おねーちゃん。また、いっしょにあそんでくれる?
 
 
幼神:え?あ、うん。いいわよ
 
 
幼透:やったー!
 
 
幼神:それじゃあまたここで会おうね!
 
 
幼透:うんっ
 
 
(少し間を空ける)
 
 
透N:しかし十年たった今も彼女に会うことは無かった。それはそうだ、日時もなにも決めていなかったんだから。分かるのは神社で会うことくらいだ。最初のうちは週に一度神社へ行っていたが、年々しなければいけないことも増え、今は毎年七五三の日のみ行くことにしている。
 
 
透N:本来であれば子供のときの口約束なんて誰も本気にしちゃいない。それでも信じている僕は傍から見たらさぞかし滑稽だろう。そして今年もあの神社へ足を運ぼうとしている
 
 
透M:それにしても、僕のときに比べてやっぱり子供が減ったな。・・・そのせいか、子供の親から不審者だと思われてそうで居辛いなぁ。とりあえずそこの石段にでも座るか・・・あ、誰か座ってる。僕と同い年くらいの人かな・・・
 
 
透:あのー、隣座っていいですか?
 
 
神楽:どうぞ。・・・君、七五三の時にこの神社に来るなんて珍しいわね。・・・はっ、もしかして小さな子を目当てに―――
 
 
透:違いますっ!僕はただ待ち合わせをしてるだけですよ
 
 
神楽:待ち合わせ・・・。差し支えなかったら誰に会うとか聞いてもいい?
 
 
透:えぇ、別に構いませんけど。・・・女の子と約束をしたんです、また遊ぼうって。・・・ただ会う約束をしたのは十年前なんです。しかもいつ会うかも決めていない
 
 
神楽:十年前・・・、それってもう相手は忘れているんじゃないの?
 
 
透:友達にもそう言われました。・・・僕も本心ではそう思っているのかもしれません
 
 
神楽:それでもここに来ているのはなぜなの?
 
 
透:多分、その女の子のことが、好き・・・だったから、また、会いたいなと思っているからです
 
 
神楽:たった一度会っただけの子なのに?
 
 
透:・・・えぇ
 
 
神楽:純情なのね
 
 
透:でも、今年で最後にしようかと思ってます
 
 
神楽:十年で区切りもいいしね
 
 
透:・・・そういえば、あなたも待ち合わせですか?
 
 
神楽:そうよ
 
 
透:奇遇ですね。あ、これも何かの縁ですし、知り合いになりませんか?僕の名前は雪待透っていいます
 
 
神楽:わたしは倉田神楽よ
 
 
透:倉田神楽さんか・・・ん?あれ、神楽って名前、どこかで・・・
 
 
神楽:そうね、わたしもその名前聞いたの十年振りだわー
 
 
透:十年・・・?かぐら・・・・・・っ!?あああぁぁっ!!
 
 
神楽:・・・十年振り、とーる
 
 
透:え、ちょっと待って!頭が混乱してきた・・・。え?今までのはなんだったの?
 
 
神楽:ふふ、ゴメンね。ちょっとからかってみたかったの
 
 
透:いつから分かってたの?
 
 
神楽:最初の待ち合わせの件(くだり)から
 
 
透:はぁ・・・。でも、なんで今年になってここに?
 
 
神楽:んーと、最初から説明させてもらうね。・・・あの後ね、親の仕事の都合で遠くの方へ転勤することが決まって、わたしも一緒についていったの
 
 
透:そう、だったんだ
 
 
神楽:だからわたしが言ったまた会おうって言葉が、すごく後悔しててね・・・
 
 
透:それだったら言いだしっぺの僕だって・・・
 
 
神楽:でもまぁ、こうやってまた会えたからよかったけどね。それでね、最近両親の転勤先の仕事が終わったから、またこっちに戻ってきたの
 
 
透:それじゃあ来れるわけないよね・・・
 
 
神楽:・・・それにしても十年経っても覚えててくれるとは思わなかったな
 
 
透:でもほとんど惰性で来てただけだし、もう、諦めようとしてたし
 
 
神楽:普通の子だったら十年も待っててくれないって
 
 
透:それでも・・・
 
 
神楽:それに私のコト、好きだって言ってくれたしねー
 
 
透:えっ!?い、いや、その、それは・・・
 
 
神楽:ふーん、それは、何なのかなー?
 
 
透:あぁ、もう!そうだよ!僕はかぐらおねーちゃんのことが好きだよっ!!
 
 
神楽:うん、わたしもとーるのことが好きだよ
 
 
透:っ!?
 
 
神楽:わー、赤くなったとーるもかわいー
 
 
透:で、でも逆になんで一目会った僕のことを、そのー・・・好きに、なったの?
 
 
神楽:んー、最後のときに見せてくれた笑顔がとっても可愛かったからかな
 
 
透:な、なんだよそれ
 
 
神楽:・・・でも、ありがとうね。ずっと待っててくれて
 
 
透:かぐらおねーちゃん・・・
 
 
神楽:(ビシッと人差し指を突き出して)もうおねーちゃんって呼ぶのは禁止よっ
 
 
透:じゃあなんて呼べばいいの?
 
 
神楽:神楽
 
 
透:恥ずかしいよっ
 
 
神楽:これは命令よ
 
 
透:うぅ・・・
 
 
神楽:ほらほら
 
 
透:・・・神楽
 
 
神楽:よろしい
 
 
透:あーもう、恥ずかしい・・・
 
 
神楽:よしっ!こうやって会えたことだし、今から遊びに行くわよっ!
 
 
透:え?
 
 
神楽:ほら!早く行くわよ、とーる
 
 
透:わっ、ちょっと待ってってばー!
 
 
 
 
 
−fin−
 
 
戻る
 
 
 
 
 
inserted by FC2 system