「サマーブリーズ」

登場人物

夏田 真 ナツダ マコト:20歳。男性
都内に住む、経済的にはほぼ普通の大学生。調子に乗る癖に
何か悪いことがあればすぐ凹んでしまう。自分の事は大好き
好みの女の子を見るとすぐ手を出そうとする


浜浦 向日葵 ハマウラ ヒマワリ:19歳。女性
真と同じ大学に通っている。人に優しくされると自分に
気があるんじゃないかと勘違いしがち。付き合うなら結婚
のことまで考えてしまう


響野 海音  キョウノ カイネ:18歳。女性
容姿は向日葵にそっくりの女の子。純粋であり天然
自分の住んでいる町は田舎であるため、都会に憧れている





*表記方法+配役+台詞数(Lines)*

真:     L72

浜浦+海音: L67

※M=心の声












真M:今、目の前であり得ないことが起こっている……


海音:おーい、真さーん


真M:これは夢なのではないだろうか……


海音:聞こえてますかー?


真M:傷心旅行に来たはずなのに、今目の前に、別れたはずの彼女がいる……


海音:真さんってばー!!




真:(タイトルコール)サマーブリーズ




真M:なぜこんなことになったのか簡潔に言うと、夏に俺の『元』彼女、浜浦向日葵にフられた。
       そして現実から逃げるように街から出てきた。正直言って最低だと自分でも思う。
       自分から告白しといて他の女の子とも関係を持っちゃったのだから


真M:……そして今、俺は海沿いの町に来ている。なぜ海なのか、
       単に傷心旅行は海という固定概念が俺の頭にあった。ただそれだけ。
       海沿いの人の傷心旅行はと聞かれても知らん、山かどこかだろう


真:あーぁ、勢いで出てきたから持ってるのは財布とタバコだけ……これからどうしたもんか……ぅわっ!!


海音:きゃあっ!?……いたたー。……あっ!?すみません、こっちの不注意でぶつかっちゃって!!


真:いやいや、俺も考え事をしながらだし、お互い…さ…ま……


海音:どうしました?……あっ、もしかしてどこか怪我したんですか!?


真:……向日葵


海音:え?ひま、わり……?


真:向日葵!!またやり直してくれるのかっ!?


海音:いやっ!?ちょっと!抱き、つかないで…ください!!


真:もしかして記憶がっ!?俺だよ、真だよ!!


海音:あぁっ!?身体をっ、揺らさないで……くださいっ!!!


真:あがっ!?



−海音が真を突き飛ばし、その先にあった壁に頭が直撃した−



海音:あれ?……動かなくなっちゃった?……もしかして死んだんじゃ―――


真:ハァ・・・ハァ・・・(呼吸音)


海音:よかった…息はあるみたいだけど……。このままじゃ駄目だし、誰もいない場所に運ばなきゃ


海音M:まことさん、だっけ……。この人、ひまわりって人に振られたのかな……?





――――――――――――

――――――

―――





真M:そして目を覚まし今に至る……


海音:聞こえてますかー!?


真:さっきからうるさいなぁ、向日葵


海音:あの!私、向日葵って名前じゃなくて響野海音っていいます!


真:海音……だと!?はっ、まさか記憶が……!?


海音:そのくだりはさっきやったじゃないですか。本当に別人ですって……


真:…そうか、そうだよな。向日葵がここにいるわけないよな


海音:つかぬことを伺いますが、向日葵って方に振られたんですか?


真:直球だね。そうだよ、つい最近、ね


海音:あ、当たっちゃった


真:当たっちゃったって……


海音:すいません


真:まぁ別にいいよ、俺も海音ちゃんに失礼なことしちゃったし、本当の事だし。……それじゃあ、もう行こうかな


海音:傷の方はもう大丈夫なんですか?


真:うん、少しだけ痛むけど大したことないよ


海音:……どこへ行かれるんですか?


真:んー…勢いで来ちゃったから特に考えてないんだけどね


海音:……それだったら


真:ん?


海音:私がこの町を案内しても、いいですか?


真:え?うん、別に構わないけど…どうして?


海音:えーっと、あのー……そ、そう!この町のいい所を知って欲しいからです!


真:…こじつけっぽいなぁ


海音:本当ですって!


真:ハハ、冗談だよ。なら、頼もうかな


海音:はい!じゃあ、まずはこっちに来てください!


真:うわっと!?そんなに引っ張らなくても大丈夫だって!





――――――――――――

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―――





−大学構内−


浜浦:きゃあっ!!……いたたー


真:ごめん!大丈夫、怪我はない?


浜浦:いえ、大丈夫です……っ!


真:もしかして足首捻ったのかな?だったら早く保健室に行かないと


浜浦:このくらい、大丈夫で……ひゃあ!?


真:このあと急ぎの用事がないんだったら保健室に連れていくけど、大丈夫?


浜浦:空きコマなので問題ないですけど……どうしてお姫様だっこ何ですか?


真:大丈夫大丈夫、君軽いから


浜浦:そういうことではなくて……


真:あ、話が変わるけど、もしかして君って新入生?


浜浦:あ、はい。そうですが……


真:いやぁ、さっきから頭の中で君の事を思い出そうとしてるんだけど全く出てこないんだよね。
    君みたいな可愛い子、忘れるはずないんだけどなって


浜浦:……気障な方なんですね


真:ハハ、良く言われる。…そんじゃあ走るよ!


浜浦:えっ!?きゃっ!急に走んないでください!!





―――――――――――――

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―――




海音:どうでしたかっ、一応田舎でも見るもの沢山あったでしょう?


真:そうだね、思いつきにしては良かった方かな?


海音:だから違いますってば!


真:はははっ


海音:もう……、でも真さんの住んでる町の話も楽しかったなぁ


真:そうかなぁ。ここみたいに自然が全く無くて、同じようなビルばっかで味気ないよ?


海音:そんなことないですよ。テレビで見る女の人たちだって皆綺麗な人ばっかりだし


真:見た目だけだよ


海音:でも真さんだって、その……カッコいいし、それに!良い人だったじゃないですか


真:ありがとう。確かに表面上はいい人かもな。…でもな、そういう奴らは上っ面が良いだけで、
     心の奥では何考えてるか分かったもんじゃないよ……もちろん俺もそのうちの一人


海音:?どうしたんですか、いきなり


真:……会ったときに彼女に振られたって言ってたろ?その原因な、俺が他の女に浮気したからなんだ


海音:そう、なんですか…?


真:浮気してた子も俺に興味がなくなったとか言って連絡途切れちゃったし、
     もちろん周りの奴らも俺に愛想尽かして離れていったよ。
     結局俺の味方はタバコだけになっちゃったわけ。ははっ


海音:……


真:君と会った時も『またツキが回ってきた』なんて思っちゃったしね。
     もう一度、向日葵に似た女の子と付き合えるんじゃないかってね


海音:……そんなの、ウソに決まってます。数時間、たった数時間でしたけど、
       真さんはそんなことを言う様な人じゃありません


真:随分と信用されたんだな。今何を考えてるか知らずにさ


海音:……どういう意味ですか?


真:君だってもう大人だ、俺がどうしようとしてるのか分かるんじゃないのかい?



−勢いよく真の頬をビンタする海音−



海音:……ごめんなさい





真:……ちょっとやりすぎたかもな。また、明日会えるなら謝っておかなきゃな…





――――――――――――

――――――

―――





浜浦:真さん……私、もう無理です


真:浮気をしたのは謝るから。もうしないからさ、この通りっ!


浜浦:その言葉、何度目か覚えてますか?もう三度目ですよ?私はもう真さんの言葉を信用することが出来ません……


真:今回の俺は本気だから!相手と関係切ってきたし……だからもう―――


浜浦:真さんがそうやって他の人と関係を持ってた間、私がどんな気持ちでいたのか知ってますか?
        素知らぬ風に話しかけてくるあなたに、いつも通り笑わなければいけないことがどんなに辛かったか分かりますかっ!?


真:向日葵……


浜浦:もう、耐えられないんです。だから……


真:……


浜浦:…もし、真さんがさっき言ったのが本当だったら、またいつか……好きになった相手を本気で愛してあげてください


真:もう…駄目なのか……?


浜浦:ごめん、なさい…





――――――――――――

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―――





−翌朝−


真M:……あの時の夢か、やっぱり昨日のせいだよな。…海でも見て落ち着いたらさっさと帰ろう、って、あれ…?


真:…海音ちゃん?


海音:あっ、真さん……


真:海音ちゃん、昨日はごめんね―――


海音:(真のセリフのに被せるように)昨日はごめんなさいっ!!


真:えっ?


海音:人をぶつなんて酷いことして……


真:謝んなくていいよ、俺がその原因を作ったんだから。こっちこそごめんね


海音:真さん……


真:そういや介抱してくれた時もここだったよね。


海音:もしかしたら真さんが来るかなと思って。それにここは私のお気に入りの場所なんです


真:そうなの?


海音:ここは地元の人もあまり来ませんから一年中静かなんです。嫌な気分になった時とか、
        落ち着かない時、ここに来ると全部忘れてすっきりした気分になるんです


真:そんな所に俺を連れてきて良かったのか?


海音:はい、真さんはいい人ですからっ


真:……昨日あんなことを言ったのは、俺みたいな浮気な奴に騙されないようにするためだってのに。全く意味がないじゃないか


海音:もし本当に悪い人なら、謝りになんか来ませんよ


真:そんな風に言われると何も言えないな……


海音:えへへ


真:ま、なんとか謝ることが出来たし、そろそろ帰ろうかな


海音:え!?もう、帰っちゃうんですか?


真:勢いで飛び出してきちゃったから、持ち金もあと何日も泊まれるほど無くてね


海音:別に私の家に泊ってくれたって……


真:親御さんに迷惑がかかるだろ


海音:じゃあ私が真さんの町に行きますっ!


真:住所も知らないのに?


海音:教えてくれないんですか?


真:教えると入り浸りそうだから駄目


海音:うっ…それじゃあまたこっちに来てください。私はいつもこの浜辺に居ますから


真:んー、それならいいかな。約束な


海音:ゆびきりげんまんですねっ!?


真:なんか子供っぽいけど、まあいいや


海音:うーそつーいたらはーりせんぼんのーます、ゆーびきった!……えへへ


真:どうしたの?


海音:なんだかこういうのって恋人同士みたいだなぁって


真:そうかな?


海音:そうですっ!


真:はは…。それじゃあまた


海音:はい!また会いましょう!


真:あぁ、バイバイ


真M:いつかまた君に、会いに来るから








−fin−



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