「バレンタインウォー」
登場人物
来更木 初花 キサラギ ウイカ:17歳 女性 タカビーで自信の塊のようなお嬢様。当たって砕けるがモットー
雪消 夕奈 ユキゲシ ユウナ:17歳 女性 異性と話すのが得意でなく、話しかけられると慌ててしまう。初花とは友達
魚住 仲春 ウオズミ ナカハル:17歳 男性 誰にでも優しく、恋愛沙汰には鈍い男。三人同じクラス
男の子 :17歳 男性 仲春のクラスメート。セリフは一つ
*表記方法+配役+台詞数(Lines)*
初花 L58
夕奈 L102
仲春+男の子 L58
仲春N:月シリーズ 二月 バレンタインウォー
−二月十四日 登校中−
初花:夕奈、恋は戦争ですのよ
夕奈:初花ちゃん・・・どうしたのいきなり
初花:今日は何の日か分かってますわよね?
夕奈:うん・・・バレンタイン、だよね
初花:その通り。もちろんあのバカ魚住のためにチョコを渡しますわよね?
夕奈:一応そうだけど・・・なんでいつも魚住君にバカって付けるの?
初花:だって夕奈の恋心に気付かないんですもの。バカ魚住にはバカがお似合いですわ
夕奈:しょうがないよ、魚住君と一対一で話したこともほとんどないし
初花:そんなことは問題ありませんわ。女性の恋心を気付いて手を差し伸べてくれるのが殿方の役目―――
仲春:雪消、来更木、おはよう
夕奈:へっ!?あっ・・・おはよう
初花:(小声で)それじゃあ聞こえませんわよ
夕奈:・・・魚住君、おはようっ
仲春:うん、おはよう
初花:いつもより早い登校ですわね、バカ魚住
仲春:会って早々いきなりだなぁ。昨日古典の宿題するの忘れたんだよ。ほら、古典って一限目だろ?
夕奈:宿題なら・・・答え教えようか?
仲春:え、まじで!?
初花:そんなことしたらバカのためにならないから止めておきなさい
仲春:ちぇっ、楽できると思ったんだけどなー
夕奈:魚住君、ごめんね
仲春:別に雪消のせいじゃないよ
初花:悪いのは宿題をしないあなたのせいですわよ
仲春:うっ・・・その通りです
初花:それでこんな所で雑談してていいのかしら?
仲春:あっ、いっけね!?そんじゃまた学校でな
(少し間を開ける)
夕奈:それで初花ちゃん、最初に言ってた戦争ってどういうこと?
初花:あのバカは優しいですわよね?
夕奈:うん
初花:それも、誰にでも
夕奈:・・・うん
初花:だから結構な数の女子はバカにチョコをあげるでしょうね
夕奈:・・・・・・うん
初花:その中で何人が本気でバカのことを好きでしょうね
夕奈:・・・・・・
初花:別に私は夕奈を不安にさせるために言ったわけじゃなくてよ。だから夕奈も他の子に負けないように勇気を出しなさいって言ってるの
夕奈:うん、初花ちゃんありがとう
−学校・一限終了後の休み時間−
初花:早速会議よ
夕奈:え、いきなり何?
初花:あのバカにチョコを渡す会議ですわ
夕奈:具体的にどうするの?
初花:それを今から決めるんですわ。とりあえずチョコを渡すのは下校時、そうなさい
夕奈:どうして?
初花:休み時間の短い時間でしたらちゃんと気持ちを伝えられないでしょう?異性へのあがり症のあなたならそれが一番ですわ
夕奈:なるほど、さすが初花ちゃん
初花:という訳で、やっぱりプレゼントを渡す時というものはインパクトが大事ですの
夕奈:イン、パクト・・・一番私に欠けてるね
初花:授業中に考えてたものがありますから、あがり症を改善するという意味でも一度やってごらんなさい
夕奈:うん、ありがとう
−パターン1−
夕奈:う、魚住君っ!
仲春:なんだよ、いきなり呼び止めて?
夕奈:こ、これっ!あげるんだから!
仲春:こ、これ、チョコなのか?
夕奈:そ、そうよっ!私があげるんだから感謝しなさいよねっ!
仲春:べ、別に貰って感謝してるわけじゃないんだからなっ!嬉しいなんて全然思ってないんだからなっ!
夕奈:わ、私だって貰ってくれて嬉しいだなんて、これっぽっちも思ってないんだからっ!
仲春:家に帰ってからじっくり食べようだなんて思ってないんだからなっ
初花:・・・実は最初からずっと見てたなんて死んでも言わないんですのよっ
夕奈:えっ・・・は、恥ずかしさなんて全く感じてないんだからねっ!
初花:こ、こっちだって良くやったなんて言ってやらないんですからねっ!
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
夕奈:・・・・・・なに、これ?
初花:何、って最近「つんでれ」というものが流行っているらしいじゃない?だから入れてみたんだけど、お気に召さなかったかしら?
夕奈:召す召さないというよりこれはツンデレじゃないよ、初花ちゃん・・・あと、ツンデレってもう古いよ
初花:あら、そうなの?
夕奈:しかも魚住君まで変な影響受けてたし・・・
初花:申し訳なかったですわ。と、もうすぐ次の授業だわ。また次の時間に作戦を立てましょう
夕奈:うん・・・
夕奈M:大丈夫かなぁ
−二限終了後の休み時間−
初花:それで、夕奈も何か考えていまして?
夕奈:う、うん。一応・・・
初花:じゃあそれをやってみましょう
−パターン2−
夕奈:あのっ、魚住君!
仲春:ん?どうした、雪消?
夕奈:・・・渡したい物が、あるの
仲春:何、かな?
夕奈:気に入ってくれるか分からないけど・・・
初花N:サッとポケットから可愛くラッピングされた包みが出される
仲春:これって、チョコ?
夕奈:うん、一生懸命作ったから、食べて欲しいな
仲春:雪消・・・
初花N:このとき魚住が雪消をギュっと抱き寄せる
夕奈:魚住君!?
仲春:ありがとう、雪消
夕奈:魚住君・・・
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
初花:却下
夕奈:だよね・・・書いてて少し恥ずかしかったし
初花:あのバカがこんなに積極的な訳がありませんわ
夕奈:でも最初の初花ちゃんのよりマシな気が・・・
初花:お黙りなさい
夕奈:うぅ・・・
初花:次は昼休みですわ。なんとかしてインパクトのある渡し方を決めますわよ
夕奈M:もう普通じゃ駄目なのかな・・・?でも、その普通が出来ない私って・・・
−昼休み−
初花:ごめんなさい、遅れて。少し用があって
夕奈:ううん、別にいいよ
初花:その代わりに、傑作が思いつきましたわ
夕奈:・・・すごく怖いよ
初花:そんなことないわ。あなたも興奮すること間違いなしよ
夕奈:嫌な予感がする
初花:気のせいですわ。では早速やってみましょう
−パターン3−
夕奈:(色っぽく)ほぉら、魚住君。コレ、欲しいんでしょ?
仲春:う、うん・・・
夕奈:うん、じゃなくて、はい、でしょ?
仲春:はい・・・欲しいです
夕奈:それだったらぁ、ちゃんとお願いしなきゃいけないじゃない。ちゃんと女王様って呼ぶのよ
仲春:はい・・・。この卑しい私めにどうか女王様のアレを頂けますでしょうか
夕奈:よーくできました。でもその前にお仕置きが必要ね
仲春:え?ど、どうしてでしょうか?
夕奈:私に何度も手間取らせた罰よ
仲春:そんなぁ
夕奈:罰として私の足をお舐めなさい
仲春:え・・・?
夕奈:何?私の言うことが聞けないの?
仲春:いえ!喜んでさせてもらいますぅ・・・
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
夕奈:な、な、ななな・・・
初花:あら、まだ続きがありましてよ?
夕奈:なによこれぇ・・・
初花:あら、興奮しませんでした?
夕奈:興奮・・・・・・したけどぉ。でもこれは無いよ、初花ちゃん・・・
初花:でも、あと一限しかないわよ。休み時間
夕奈:なんかすっごく時間を無駄にしてる気がするんだけど
初花:そんなことありませんわ。これのお陰でバカの前でより話しやすくなったはずだわ
夕奈:そうかなぁ?
−四限終了後の休み時間−
初花:最後は夕奈の番ですわよ。
夕奈:うん・・・
初花:乗り気じゃないですわね
夕奈:どうせ考えた通りに言えないんだったらどうなってもいいや、って感じで書いちゃったから・・・
初花:一応見せて御覧なさい
夕奈:・・・うん
−パターン4−
夕奈:(子供番組のお姉さんっぽく)なかはるくーん、こーんにーちはー!
仲春:(それに出て来る子供のように)こーんにーちはー
夕奈:あれー?聴こえないぞー。もう一回!こーんにーちはー!
仲春:こーんにーちはー!
夕奈:元気でいい声が聴こえたねー!今日はー、なかはる君にいいものを持ってきたよー
仲春:なーになーに!?
夕奈:でもそれをあげるにはお姉さんの質問にちゃんと答えないといけませーん
仲春:えー
夕奈:まずは一つ目!なかはる君は毎日良い子にしていますかー?
仲春:うん、してるしてるー
夕奈:二つ目!毎日寝る前に歯磨きをしていますかー?
仲春:ちゃーんとしてるよー
夕奈:えらいえらい!それじゃあ最後の質問だよー。なかはる君はお父さんお母さんの言うことをちゃんときいてるかーい?
仲春:うぅー
夕奈:あれー、どうしたんだーい
仲春:ときどき、きいてない・・・
夕奈:これからはちゃんと言うことをきくかな?
仲春:うん・・・
夕奈:よーしえらい子だ!そんな良い子のなかはる君にはチョコのプレゼントだよー
仲春:わーい!
夕奈:食べたらちゃんと歯を磨くんだよー?
仲春:はーい!
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
初花:なにかあなたの中で吹っ切れました?
夕奈:・・・かもしれない
初花:でもこれだけバカを使って遊んだんですもの、きっと上手くいきますわ
夕奈:うん、そうだね。ありがとう
−放課後−
初花:それでは私は先に帰らせてもらいますわよ
夕奈:え、なんで!?一緒にいてくれないの?
初花:なぜあなたの告白に私が立ち会うの?一人で頑張りなさい
夕奈:そんなぁ・・・って、本当に行っちゃった・・・
夕奈M:どうしようやっぱ緊張してきちゃった・・・、深呼吸しないと
夕奈:すー・・・・・・はー・・・・・・。よし!じゃあ魚住君に―――って、あれ?もう教室にいない・・・
夕奈:・・・あのー、魚住君って・・・もう、帰ったりした、かな?
男の子:あー、アイツならさっさと下に降りてったよ。もう帰ったんじゃないかな
夕奈M:えぇーーーーー!!??
−校舎の入り口から校門までの道−
夕奈M:はぁーあ・・・折角初花ちゃんが協力してくれたのに・・・。それに頑張って作ったんだけどなぁ
仲春:雪消ー
夕奈M:こんな行事ももうしばらく無いし、チャンス消えちゃったんだろうな・・・
仲春:雪消ー?
夕奈:それで魚住君と他の女の子がイチャイチャしてるのを教室で眺めなきゃいけないなんて・・・ ブツブツ
仲春:おーい、雪消ー?
夕奈:誰ですかさっきから?って・・・うっ、魚住君!?
仲春:呼んでも全く返事が無かったからどうしたのかと思ったよ
夕奈:あ、あれ?魚住君ってもう帰ったんじゃあ・・・
仲春:いやー、こうしたら雪消からチョコがもらえるぞー、って来更木に言われてさ
夕奈:え・・・?
初花:バカ魚住、ちょっと話がありましてよ
仲春:だからバカって呼ぶなってば・・・で、話って?
初花:唐突だけど、夕奈の作ったチョコ、欲しいかしら?
仲春:え?それってどういう―――
初花:御託はいいの。欲しいか欲しくないかハッキリなさい
仲春:そりゃあ・・・欲しいよ
初花:それでしたら放課後すぐ教室からでて校舎の入口で待っていなさい。あと
仲春:うん?
初花:それは告白と受け取ってよろしいかしら?
仲春:なんでそれを来更木に言わなきゃいけないんだよ・・・
初花:それを言わないと夕奈からチョコをもらえなくてよ
仲春:・・・雪消に言うなよ
初花:私の口はスイス銀行よりも固くてよ
仲春:なんだよそれ・・・
初花:それでどうなんですの?
仲春:・・・あぁ、好きだよ
仲春:てな感じでさ
仲春M:まぁ後半は絶対に言えないけど
夕奈:なんか、初花ちゃんが悪いことしてごめんね
仲春:いや、雪消が謝ることじゃないよ。・・・でさ
夕奈:何?
仲春:来更木の話・・・本当なの?
夕奈:えっ?
仲春:いや、そのー・・・。チョコがもらえるって・・・
夕奈:あ・・・・・・うん(小声で)
仲春:わざわざ作ってくれたの?
夕奈:・・・うん
仲春:雪消、ありがとう!
夕奈:・・・貰ってくれて嬉しいだなんて、これっぽっちも思ってないんだからっ(独り言でボソっと)
仲春:ん、何か言った?
夕奈:ううん!?何も言ってないよ!
夕奈M:良かった・・・聞こえてなくて。・・・初花ちゃん、本当にありがとうね
初花:無事に渡せてよかったですわね。夕奈
−Fin−